最近、抗生物質に対する耐性菌(抗生物質に抵抗して抗生物質が効きにくくなっている菌)が話題になっています。
発熱患者に対する抗生物質の安易な投薬は耐性菌の増加の原因となります。
私たち小児科医は風邪症候群の80%以上はウイルスによるものと認識して診療していますが、その中で、細菌性感染症と考えられるものやその可能性が高いものに対して抗生物質を投与しています。
溶連菌感染症などでは、咽頭を見るだけで、”溶連菌感染症です”と診断できる場合も多々ありますが、溶連菌感染症の児と接触があった児で咽頭の発赤がそれほど強くなくても、迅速検査をおこなって溶連菌感染症だと判明する例も少なくありません。溶連菌感染症では、抗生物質をしっかり服用する必要があります。
夏かぜ(ヘルパンギーナ、手足口病、プール熱などのウイルス感染症)がみられる季節になりましたが、夏かぜには抗生物質は効きませんので抗生物質の投与はしません。
これから上記のような夏かぜの発生が増加してくると考えられますが、ウイルス感染症の確率だけを考えて診療するのではなく、一人ひとりの熱の発症状況や、理学的所見などから薬剤投与について考慮しなければなりません。
ウイルス感染症と考えられて治療されていた症例が、重症細菌感染症(肺炎など)だと判明するすことも時々あります。
私たち小児科医は小児の呼吸器感染症の診療において、細菌感染症が考えられる症例に対しては、薬剤耐性菌の出現を最小限にとどめる抗菌薬療法を考慮しながら診療にあたっています。
近年外来での迅速検査が可能になっており、必要に応じて検査をおこなうことで抗菌薬(抗生物質)の投与の判断の参考にする事ができます。
臨床症状、所見をしっかりと確認し、周囲の流行状況なども考慮しながら、
必要あれば、迅速外来検査(RSウイルス感染症、ヒトメタニューモウイルス感染症、溶連菌感染症、マイコプラズマ感染症)などをおこない、適正、かつ最小限の抗菌薬の使用に努めています。
(ウイルス感染症が多いからと言って、対症療法で薬を出すのみの診療をしていますと、RSウイルス感染症やマイコプラズマ感染症では、家族内の、又はその周囲の感染へと広がり、その家族はかなりの負担を強いられることになります。)